スポンサーサイト

--/--/-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

目を覚ますと首の痛みを感じたので、私の首も取れるのだろうと思った。

2008/03/18 19:50
いつものように猫がピアノの蓋の上からにゃあと鳴く。

猫が机などの高さから鳴くのは、大概、甘やかして欲しい時だ。私はその愛らしい毛皮を撫でてやろうと手を伸ばした。
すると突然かまいたちが通り過ぎたかのように、猫の首が落ちてしまった。

ゴトリ

私は驚きと、ああもうこの子は駄目なのだな、という覚悟のような緊張のようなものを瞬間的に感じた。

しかし思いの外、猫の頭はまだ生きていた。たまに瞬きをしたり口を開いたりしている。(鳴こうにも声帯がちょん切れているのだ)
そういえば、ギロチンで頭を切り離されてからどのくらい生きてられるのか検証するために、死刑囚が意識のある間瞬きを20秒くらいし続けた。という話があったが、今がそれなのだろうか。

私は猫の眉間をちょいちょいと撫でた。猫の頭は、弱っているには違いないが、死にそうでもなかった。
案外平気なのだなと恐る恐る頭を体に付けてみる。意外にも今まで倒れていた体まで動き出した。しかしすぐに頭が落ちてしまいそうになる。

仕方がないので2・3ヶ所縫い付けてみた。きっと痛がって嫌がるだろうと思ったが、よほど弱っていたのか、あるいは一度頭が取れたせいで神経が駄目になってしまったのか、猫は大人しくしていた。

危なっかしい猫から目が離せないでいると、母親が帰ってきた。

「お母さん、猫の首が取れてしまったのだけど、どうやら平気みたいなのです」

「あら、そう」

平静な母親を見て、私はなんだかホッとした。

母親が猫を抱いていってしまったので、私は手持ち無沙汰になり部屋や廊下をウロウロした。
その途中で何かを見つけた。これは明日祖母の誕生日に渡すものではないか。私はこれを祖母の家へ持って行こうと思った。

気がつくとピアノの蓋の上に兎がいた。なんて懐かしい!これは私が昔飼っていた兎だ。
兎はこちらを向いて鼻をヒクヒクさせていた。可愛い。私がしばらくその様子を見ていたいと思っていると、突然かまいたちが通り過ぎたかのように兎の首から大量の血液が出てきた。痛そうなので眉をひそめた。今回は八割のところで切れ目が止まっていた。でも首が非常に取れやすくなっていることには変わりない。

兎がジャンプしようとするのを手で抑えた。毛皮の湿った部分を抑えつけているのに気付いて、罰の悪い気持ちになった。痛いだろうとすまなく思いながら様子を伺ったが、兎は大人しくこちらを見つめていた。

私は兎の頭が取れないように、2~3ヶ所縫い付けてやった。

ブツッ ブツッ

これだけ痛がらないと、さっきから私ばかりが勝手に気がねしているように思える。やはり動物の気持ちは動物にしかわからないのだ。

私は兎を抱いて、祖母の家へ行った。風が強く、雨も降りそうな天気だった。鍵は開いていたが、部屋は薄暗く、祖母はいなかった。薄暗い部屋にはいたくないので、私は何かを置いて家を出た。どうせ明日、改めて明るい部屋に来る予定なのだし。

家に帰ると和室から猫の甘える声と母親の優しい声が聞こえた。もう声が出るまで回復したのか、と少しだけ嬉しくなった。
猫は首に包帯をしていた。包帯から赤いものがぼんやり滲んでいたが、先ほどよりもよっぽど安定感を感じた。

「お母さん、この子も縫い直してやって下さい」

お母さんは器用に兎の首を縫い直して、包帯を巻いた。
兎の包帯にも赤いものがぼんやりと滲んできたが、私はとても安心した気持ちになった。

「あら、ここにあったものはどうしたの?」

「おばあさんの家へ持って行ったよ」

「そう」

平静な母親を見て、私は少しだけ明るい気持ちになった。
スポンサーサイト

Trackback

Trackback URL:
 Home 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。